β–シクロデキストリンと最も相性のいいゲスト分子は?という問いに、多くの研究者はアダマンタンと答えるだろう。事実、β–シクロデキストリンとアダマンタンのホスト–ゲスト相互作用を利用した超分子素材が、多分野において開発されている。しかし、β–シクロデキストリンとアダマンタン誘導体の相互作用様式を詳細に調べた研究は、意外にも少ない。Schönbeck は、adamantane-1-carboxylate (アニオン性) および 1-adamantyl ammonium (カチオン性) の 2 種類のアダマンタン誘導体を用いて、β–シクロデキストリンおよびその誘導体との相互作用様式を解析した。1-adamantyl ammonium の場合、アンモニウム基は β–シクロデキストリン空洞に包接されず、空洞の広い方 (2 級側) からはみ出た包接様式を示した。一方、adamantane-1-carboxylate の場合、カルボキシル基が、β–シクロデキストリン空洞の広い方 (2 級側) のみならず、狭い方 (1 級側) にも位置し、2 パターンの包接様式が存在することが示唆された。すなわち、アダマンタン誘導体の官能基の違いにより、β–シクロデキストリンの包接様式も異なることが明らかとなった。なお、各種 β–シクロデキストリン誘導体 (ジメチル体、トリメチル体) で大きな差異は見られなかった。
参考論文
Charge Determines Guest Orientation: A Combined NMR and Molecular Dynamics Study of β-Cyclodextrins and Adamantane Derivatives.
Christian Schönbeck
Department of Science and Environment, Roskilde University, Denmark
J. Phys. Chem. B, 122, 4821-4827 (2018).