D-β-ヒドロキシ酪酸塩とメラトニン(BHB/MLT)の点滴剤は、出血性ショックモデルの生存率を向上させる。従来のBHB/MLT製剤はメラトニンの溶解性を増加させるためにDMSOを含んでいる。そこで、筆者らは、DMSO中のBHB/MLT溶液を10%ポリビニルピロリドン(BHB/MLT/PVP)もしくは5%ヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリン/2.5%PVP/2.5%ポリエチレングリコール400(BHB/MLT/CD)に置換し、最適な処方を検討した。出血性ショックモデルのラットにそれぞれ急速投与したところ、BHB/MLT/CD投与群の生存率が最も延長した。以上のことから、BHB/MLT/CDの構成は、出血性ショックの治療ににおいて有望な候補になり得る。
参考文献
Evaluation of novel formulations of d-β-hydroxybutyrate and melatonin in a rat model of hemorrhagic shock
A. Wolf1, S. Thakral2, K. Mulier3, R. Suryanarayanan2, G. J. Beilman3
aDepartment of Surgery, University of Minnesota, Minneapolis, MN 55455, USA
bDepartment of Pharmaceutics, University of Minnesota, Minneapolis, MN 55455, USA
Int. J. Pharm. 548, 104-112 (2018).
Current Impact Factor of 3.862 (2017 Journal Citation Reports)

CDとカンプトテシン(CPT)がジスルフィド結合を介して結合した分子(CD-SS-CPT)が分子間でロタキサン様構造を形成し、コア部分はCPTのπ-πスタッキングにより自己会合することで、ナノ粒子を形成した。また、CPT-PEG-RGDおよびCPT-PEG-NOTAを導入することで、直交的に会合させることが可能となり、さらに、ターゲティング能とイメージング能も有する。本ナノ粒子は、アクティブおよびパッシブターゲティングによりがん細胞に取り込まれ、グルタチオンによりジスルフィド結合が切断されることで、CPTを放出し、抗がん活性を示す。実際、乳がんの同所移植モデルマウスに対して、全身毒性や長期免疫毒性は観察されず、顕著な抗がん活性および抗転移効果を示した。以上のように、超分子技術を用いた本ナノ粒子は、がんセラノススティクスの新たな一歩となり得る。