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研究用試薬販売

 

 

CyDの特性を活用した研究用試薬の販売を行っています。

robo TRANsCERTM (ロボトランサー™)

タンパク質や抗体の安定性を劇的に改善する「安定化剤」

活性を保持したままタンパク質を PEG 化する 「SPRA キット」 

robo TRANsCERTM (ロボトランサー™)

robo TRANsCER™ はゲノム編集分子である Cas9 ribonucleoprotein (Cas9 RNP) を細胞内に安全かつ高効率に導入するための試薬です。最高水準の導入効率と安全性を実現した Cas9 RNP 導入用キャリアです。

  • Cas9 RNP とは
    Cas9 RNP は DNA 切断酵素である Cas9 タンパク質 (両性電荷を帯びており全体的にカチオン性) とガイド RNA (アニオン性) の複合体であるため、複雑なかたちと電荷分布を有しています。したがって、従来の核酸導入試薬とは効率よく複合体を形成しませんでした。
  • robo TRANsCER™ とは
    robo TRANsCER™ は、ポリロタキサンと呼ばれる超分子にアミノ基を修飾した構造を有します。ポリロタキサンに修飾したアミノ基は自由自在に動くことができるため、robo TRANsCER™ は Cas9 RNP のかたちや電荷分布を認知して変形し、オンデマンドにアミノ基を提示する結果、高効率に複合体を形成します (図 1)。実際、アミノ基が動きにくい対照として調製したアミノ化デキストランと比較しても、robo TRANsCER™ は非常に高効率に複合体を形成しました (図 2)。

図 1. robo TRANsCERTM が Cas9 RNP と相互作用する様子

図 2. robo TRANsCERTM と Cas9 RNP との複合体形成 (ζ-電位)

robo TRANsCER™ は細胞外では膜傷害性を示しませんが、エンドソーム環境選択的に膜傷害性を示し、エンドソームから速やかに脱出します。robo TRANsCER™ は分子内にジエチレントリアミン (DET) を有します (図 3)。この DET は細胞外環境の pH 7.4 においては 1 価のカチオンですが、エンドソームの pH 5.5 環境においては 2 価に変形します。2 価になると膜傷害性が増強するため、エンドソーム環境選択的に膜傷害性を示し、速やかに脱出します (図 4)。

図 3. robo TRANsCERTM の設計図

図 4. robo TRANsCERTMのエンドソーム脱出

さらに robo TRANsCER™ は、エンドソーム脱出後、細胞質に移行すると Cas9 RNP を放出します。robo TRANsCER™ は分子内にシスタミン (Cys) を有します (図 3)。この Cys 中のジスルフィド結合 (-S-S- 結合) は細胞質の還元環境で分解されるため、細胞質でアミノ基数を半減させ、Cas9 RNP との相互作用が減弱する結果、放出します。放出された Cas9 RNP は高効率に核に移行します (図 5)。

図 5. robo TRANsCERTM から放出された Cas9 RNP の核移行

このように robo TRANsCER™ は、以下のプロセスを経て、Cas9 RNP を核まで効率よく送達します (図 6)。

  • Cas9 RNP のかたちや電荷分布を認識して強く相互作用する。
  • 細胞内に効率よく取り込まれる。
  • エンドソームでカチオンを増幅させ膜破壊効果を示し、速やかにエンドソームを脱出する。
  • 細胞質の還元環境で部分的に分解され、アミノ基を減らし、Cas9 RNP を放出する。
  • Cas9 RNP は核に移行し、robo TRANsCER™ は細胞内のカルボキシエステラーゼで代謝され、低分子化する。

図 6. robo TRANsCERTM の Cas9 RNP 送達機構

上記プロセスを経て、robo TRANsCER™ と Cas9 RNP の複合体は、in vitro において高効率にゲノム編集を誘導します。またその効率は Cas9 RNP 導入用試薬として最高水準の実績を誇る汎用試薬 A と同程度でした (Cas9 RNP 29.2 nM において) (図 7)。

図 7. robo TRANsCERTM/Cas9 RNP 複合体の in vitro ゲノム編集効率 (GFP ノックアウト効率, Hela 細胞)

robo TRANsCER™ の細胞障害性は非常に低く、実際、Cas9 RNP 濃度を 58.4 nM まで増大させても細胞障害性を示しません (図 8)。その結果、高濃度の Cas9 RNP を処理できるようになり、より高いゲノム編集効果を誘導できます (図 7)。

図 8. robo TRANsCERTM/Cas9 RNP 複合体の細胞障害性

さらに、腫瘍内への局所投与においても robo TRANsCER™/Cas9 RNP 複合体は、in vivo ゲノム編集を誘導可能です (図 9)。

図 9. robo TRANsCERTM/Cas9 RNP 複合体の細胞障害性

以上のように、robo TRANsCER™ は自身の変幻自在特性により、細胞内外で変形を繰り返し、Cas9 RNP を高効率に核まで送達します。

■価格
容量 価格 試験可能回数
5 mg (0.5 mg × 10 本) 65,000円 (税抜) 約 160 回 (24wellプレートの場合)
10 mg (0.5 mg × 20 本) 110,000円 (税抜) 約 320 回 (24wellプレートの場合)
■プロトコール

詳細なプロトコールはこちらからご確認ください。

■動画説明(約10 分から本キャリアの説明)
※熊本大学薬学部 製剤設計学分野ホームページへのリンク

 
■参考論文

1) Polyrotaxane-based Multi-step Transformable Materials for the Delivery of Cas9 Ribonucleoprotein. Toru Taharabaru, Takuya Kihara, Risako Onodera, Tetsuya Kogo, Kenjirou Higashi, Kunikazu Moribe, Teruya Nakamura, Keiichi Motoyama, Taishi Higashi, Applied Materials Today, in press (2022).

 

タンパク質や抗体の安定性を劇的に改善する「安定化剤」

超安定化剤は、タンパク質や抗体のかたちを認知して巻き付き、タンパク質分子表面に可逆的に PEG を修飾することができます。これにより、混合するだけでタンパク質や抗体の安定性を劇的に改善します。また、タンパク質種によっては血中滞留性も向上させます。なお、タンパク質の活性を損なうことはありません。

超安定化剤とタンパク質・抗体との複合体形成機構

超安定化剤添加時の抗体の安定性 (500 rpm と非常に強い条件で攪拌)

 

 

活性を保持したままタンパク質を PEG 化する 「SPRA キット」 

Self-assembly PEGylation Retaining the Activity の略で、タンパク質の活性保持型自己会合 PEG 化技術のことです。

PEG 化した CyD とアダマンタンが結合したタンパク質を混合することで、SPRA タンパク質となります。

SPRA とは?

SPRA 技術は、CyD とアダマンタンの可逆的な相互作用を利用してタンパク質を PEG化するため、タンパク質の生理活性を低下させることなく、物理化学的安定性や血中滞留性を向上させます。実際に、モデルタンパク質のリゾチームを SPRA 技術により、PEG 化したところ、生理活性 (酵素活性) をほぼ 100% 保持していました (下図左)。

さらに、SPRA-インスリンをラットに投与した結果、生理活性 (血糖降下作用) を保持したまま血中滞留性を向上させることに成功しました (下図右)。

タンパク質と混ぜるだけでアダマンタンが結合する「活性化アダマンタン溶液」とアダマンタン-タンパク質と混ぜるだけで SPRA タンパク質を調製できる 「PEG 化 CyD」 をキットとして販売します。詳細はお問い合わせ下さい。