コレステロール結晶(CC)は、アテローム硬化性プラークに豊富に存在し、補体系およびインフラマソーム活性化を介して炎症応答を促進する。
環状オリゴ糖2-ヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリン(BCD)は、親油性物質を可溶化する化合物である。
最近我々は、BCDが、インフラマソームおよび肝臓X受容体(LXR)の活性化の抑制を介して、CCに対する抗炎症効果を有することを示した。
しかしながら、 CCの補体活性化に対するBCDの効果は未だ不明である。
本研究において、BCDがCCに結合し、ヒト血漿中のCC上のイムノグロブリン、パターン認識分子および補体因子の沈着を減少させることが見出された。
さらに、BCDは、補体活性化を低下させ、CC曝露に応答して全血中の単球上の補体受容体の発現を低下させた。
これに伴い、BCDはまた、CCに起因する全血中の活性酸素種の形成を減少させた。
さらに、BCDは、ヒト末梢血単核細胞におけるCC誘発炎症性サイトカイン応答(例えば、IL-1α、MIP-1α、TNF、IL-6およびIL-8)ならびに様々なCC誘導性遺伝子発現を低下させた。
また、BCDはエクスビボで処置したヒト頸動脈プラークにおける補体関連遺伝子発現を調節した。
例えば尿酸一ナトリウム結晶およびザイモサンといった他の補体活性化物の終末補体複合体補体の形成は、BCDの影響を受けなかった。
これらのデータは、BCDによる補体活性化の減弱によると考えられるCC誘導性炎症応答をBCDが阻害することを示すものである。
したがって、これらの知見は、アテローム性動脈硬化症の治療薬としてのBCDの可能性を支持するものである。
参考論文
Cyclodextrin Reduces Cholesterol Crystal-Induced Inflammation by Modulating Complement Activation
Bakke S.S. et al.,
Center of Molecular Inflammation Research, Department of Cancer Research and
Molecular Medicine, Norwegian University of Science and Technology, 7491 Trondheim,
Norway
J. Immunol., 199(8), 2910-2920 (2017).