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シクロデキストリンポリロタキサンを用いて、高寿命のリチウムイオン電池の開発に成功

2018.6.8

リチウムイオン電池において、ケイ素 (Si) を電池電極の負極に用いると、電池容量が飛躍的に増大する。しかし、Si は充放電を行うと、体積が数倍に膨張・収縮し、これを繰り返すと破断され、電池容量が著しく低下してしまう。最近 Choi らは、Si 粒子を接合するバインダー高分子に、シクロデキストリンポリロタキサンを組み込むことで、破断しにくい負極を構築することに成功した。通常用いられるポリアクリル酸をバインダーとした場合、50 回の充放電で初期容量の 48% まで電池容量が低下したのに対し、5% のポリロタキサンで架橋されたポリアクリル酸を用いると、370 回の充放電後も初期容量の 85% が維持されていた。これは、東京大学の伊藤耕三教授らが発明された環動ゲルの理論に基づいたものであり、Si 負極の体積が膨張しても、ポリロタキサン中のシクロデキストリンがスライドリングし、応力を分散させたことに起因する (滑車効果)。本知見は、長寿命のリチウムイオンを開発する上で、極めて有益である。

 

参考論文

Highly elastic binders integrating polyrotaxanes for silicon microparticle anodes in lithium ion batteries.

Sunghun Choi et al.

Graduate School of Energy, Environment, Water, and Sustainability (EEWS) and KAIST Institute (KI) NanoCentury, Korea Advanced Institute of Science and Technology (KAIST), Daejeon 34141, Republic of Korea.

Science, 357, 279-283 (2017).

Current Impact Factor of 37.205 (2017 Journal Citation Reports)