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分子と分子の情報伝達:刺激が次々に伝達されて色素を放出するスマートキャリア

2018.8.3

情報を正確に伝えるということは、非常に難しいものだ。高等生物である人間同士ですら、正確に情報伝達することに悩まされる。Llopis-Lorente らは最近、分子間同士で次々と情報伝達し、最終的なアウトプットとして、色素を放出するスマートキャリアの構築を行った。具体的には、グルコース脱水素酵素を修飾した金ナノ粒子と色素を封入したメソポーラスシリカのハイブリッドキャリアを構築した。このメソポーラスシリカの表面には、カチオン性の疎水性官能基を修飾し、さらにシクロデキストリンを包接させることで蓋をした。これにより、シリカ粒子内に色素が閉じ込められた。興味深いことに、本ハイブリットキャリアにグルコースと NAD+ を添加すると、グルコース脱水素酵素によりグルクロン酸が産生され、周辺が酸性環境に転じた。続いて、シリカ粒子表面の疎水性官能基がイオン化し、親水性となる結果、シクロデキストリンが解離し、色素を放出した。すなわち、グルコース→酸性→イオン化→シクロデキストリンの解離→色素放出と、分子間で情報伝達が行われた。本技術は、分子マシン、分子センサー、分子スイッチ等を構築する上で有益であろう。

 

参考論文

Hybrid Mesoporous Nanocarriers Act by Processing Logic Tasks: Toward the Design of Nanobots Capable of Reading Information from the Environment.

Antoni Llopis-Lorente et al.

Instituto de Reconocimiento Molecular y Desarrollo Tecnológico (IDM), Spain

ACS Appl. Mater. Interfaces, in press (2018).