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腫瘍環境のpH応答性シクロデキストリンキャップを施した新規金ナノ粒子

2018.7.10

金ナノ粒子(AuNP)は、腫瘍の選択的治療や診断を目的として、様々な修飾が施されている。しかしながら、多くの報告において、腫瘍選択性が十分ではないため、in vivo での集積効率や薬効の低さが懸念されている。AuNPは、光駆動の光熱活性により、腫瘍細胞を直接的な傷害性を有するため、高い腫瘍選択性を達成できれば、がん治療や診断に大きく貢献できる可能性がある。

そこで、筆者らは、腫瘍環境のpH応答性を有するAuNPシステムを構築した。具体的には下図の通りである。

AuNP.png

まず、DOPAとNH2基を有するシクロデキストリン(dCD-NH2)および光感受性物質のクロリンe6とジメチルマレイン酸を有するシクロデキストリン(cCD-DMA)の2種類を合成した。DOPAを介してPEGが結合しているAuNPに同じくDOPAを介してdCD-NH2を結合させ、cCD-DMAを添加することで、dCD-NH2のNH2とcCD-DMAのDMAが静電的相互作用により複合体が形成される。本複合体は、pHの低下(腫瘍環境)によりDMAが解離し、cCDがリリースされることで、AuNP表面にdCD-NH2が露出する。露出したdCD-NH2のNH2基のプラス電荷が腫瘍細胞と相互作用し、細胞内に取り込まれ、光熱療法(PTT)により抗がん活性を示す。さらに、クロリンe6もリリースするため、光線力学的療法(PDT)による効果も示す。実際の検討において、本複合体は、in vivoにおいて、腫瘍細胞に集積し、PTTおよびPDTの併用により、強い抗がん活性を示した。

以上のことから、本複合体は、AuNPを利用したPTTおよびPDTにおいて、重要な知見となり得る。

 

参考文献

Gold nanoparticles bearing a tumor pH-sensitive cyclodextrin cap

M. Koo1, K. T. Oh2, G. Noh1, E.S. Lee1

1Department of Biotechnology, The Catholic University of Korea, 43 Jibong-ro, Bucheon-si, Gyeonggi-do 14662, Republic of Korea

2College of Pharmacy, Chung-Ang University, 84 Heukseok-ro, Dongjak-gu, Seoul 06974, Republic of Korea

ACS Appl. Mater. Interfaces, DOI: 10.1021/acsami.8b08595 (2018)

Current Impact Factor of 8.097 (2017 Journal Citation Reports)