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2-ヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリンは、オートファジー機能不全をレスキューすることで、アルツハイマー病治療薬としての有効利用が期待される

2018.6.11

オートファゴソームの蓄積によるマクロオートファジー/オートファジーの異常は、アルツハイマー病(AD)の初期の神経病理学的所見として特徴的である。

プレセニリン1機能の喪失は、リソソーム機能を損ない、オートファジーを抑制すると報告されているが、ADにおけるオートファジー機能不全につながる詳細なメカニズムは不明である。

エンドソーム-リソソーム異常およびオートファジーの減弱を伴うADやニーマン・ピック病C型の病理学的特徴が類似していることから、これらにはコレステロール蓄積が共に関連しているものと考えられる。

AD モデルマウスを用いた検討から、脳内のコレステロールレベルが高いと、オートファゴソームの形成を亢進するが、エンドソーム-リソソーム小胞との融合を生じさせないことが示された。

これらの組み合わせは、Aβおよび内在性MAPT(微小管関連タンパク質タウ)の分解を抑制し、オートファジー依存的なAβの分泌を促進した。

ADモデルマウスにおけるAβの蓄積によって惹起された酸化ストレスは、コレステロール依存的なミトコンドリアグルタチオン/mGSHの枯渇を引き起こすことで、オートファジーを誘発した。

GSHエチルエステル添加によりミトコンドリアのGSHを回復させると、Aβによって惹起されたATG4Bの切断活性を酸化的な抑制の抑制により、オートファゴソームの合成を阻害した。

さらに、エンドソーム-リソソーム内にコレステロールを負荷すると、その融合能に影響を及ぼすRAB7AおよびSNAP受容体(SNARE)のレベルと膜分布を変化させた。

これらの結果から、2-ヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリンを用いたin vivo治療は、これらの変化を完全にレスキューすることから、AD 治療薬としての有効利用が期待できる。

参考論文

Cholesterol impairs autophagy-mediated clearance of amyloid beta while promoting its secretion.

Elisabet Barbero-Camps et al.

Department of Cell Death and Proliferation, Institut d’Investigacions Biomediques de Barcelona, Consejo Superior de Investigaciones Cientıficas (CSIC), Institut d’Investigacions Biomediques August Pi i Sunyer (IDIBAPS), Barcelona, Spain

Autophagy, Jun 4:1-26 (2018).

Current Impact Factor of 8.593 (2017 Journal Citation Reports)