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眼の難病クリスタリン網膜症の治療薬候補としてメチル-β-シクロデキストリンが発見された

2018.5.17

クリスタリン網膜症は、日本人に多い遺伝性網膜変性疾患であり、病初期には網膜色素上皮細胞が障害され、その後2次的に視細胞障害が生じて網膜変性が進行することで最終的に失明に至ると考えられています。クリスタリン網膜症の原因遺伝子は、チトクロームP450CYP4V2であると報告されていましたが、その病態は全く分かっていませんでした。本研究グループは、疾患特異的iPS細胞を用いて、患者由来の網膜色素上皮細胞を得ることで、試験管内での疾患モデルの作成に成功しました。患者由来の網膜色素上皮細胞では、空胞形成を伴う細胞変性が生じており、その結果、細胞死が引き起こされていました。また、患者由来の網膜色素上皮細胞に対して、網羅的脂質解析を用いることで、細胞内の遊離コレステロール蓄積がリソソーム機能障害を介して細胞変性・細胞死を引き起こしていることが明らかとなりました。更に、メチル-β-シクロデキストリンは、網膜色素上皮細胞内の遊離コレステロール蓄積を阻害することで、クリスタリン網膜症の病態を改善させることが示されました。

参考論文

Reduction of lipid accumulation rescues Bietti’s crystalline dystrophy phenotypes.

Hata M, Ikeda HO, Iwai S, Iida Y, Gotoh N, Asaka I, Ikeda K, Isobe Y, Hori A, Nakagawa S, Yamato S, Arita M, Yoshimura N, Tsujikawa A.

Proc. Natl. Acad. Sci. USA. 2018, 115(15):3936-3941.